君は、幸せな人魚姫になった
「体育祭の応援歌、作ってみたよ〜!」

明るくて、優しくて、人が嫌がることも笑顔で取り組む。そんな帆高とは正反対のみずきは、クラスの人気者だ。そんなみずきは帆高にも優しくしてくれる。

「青山くん、消しゴム落としたよ」

両親にすら向けられたことのない笑顔を向けられるたび、帆高の心は高鳴っていく。そして、これが「恋」という感情なのだと初めて帆高は知った。

帆高の恋心を少しずつ育てながら、季節は巡っていく。そして高校二年生になった。クラスがみずきと同じだと知った時、帆高は無性に嬉しさを感じ、「またよろしくな」と声をかけることができた。

「うん、よろしく!」

みずきとは出席番号が近いため、隣同士の席になる。それが嬉しかった。授業中に見せる真剣な横顔をチラリと見ることができるからである。

そして季節は夏になり、学生の誰もが胸を弾ませる夏休みが近づいてくる。帆高は借りた本を返すため、図書室へと向かう。

「失礼します」
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