離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 自分を変えるほどの恋を期待するほど子供ではないのもあり、自然と遠ざかっていたわけだ。

「なるほどね、まだそう思える人に出会えてないんだ」

 母が納得したようにうなずきながら、私の髪をいじり始める。

 やはり母もそう思うのか、と思いながら私もうなずきを返した。

「お父さんはお母さんにとってそういう人だったの?」

「うん。……私の寿命を半分あげてもいいから、一緒にさっちゃんの成長を見守りたかったな」

 母はいつも父の話を幸せそうに、そして寂しそうに語る。

 それでも私は彼女の泣き顔を見た記憶がなかった。つらい顔だって記憶にない。

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