離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
「今はこれだけで我慢しておく」

 爽やかなライムが香るキス。唇に残った香りはしばらく忘れられそうにない。

 フロアから見えない席とはいえプライベートな場所ではないのだからと止めたかった。

 しかし気づけば私も智秋に口づけを返している。

 彼がライムの香りを与えてくれたから、私もりんご味の甘いキスを贈った。

「人が我慢できなくなるようなことをするんだもんな」

「ちゃんとお返ししたかったの」

 子供ができてからもこんな甘酸っぱい気持ちで胸が満たされるなんて知らなかった。

 去年の今頃、智秋の子供を妊娠したと知って喜びと不安でいっぱいだったというのが信じられない。

< 206 / 235 >

この作品をシェア

pagetop