離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 過去の自分に初めて知った恋はちゃんと叶うのだと教えたら、どんな顔をするだろう?

「今日は楽しかったね」

 くすぐったい想いを抱きながら、今感じたものをそのまま口にする。

「幸せだなって思った」

 たしかに私は彼の言う通り、なんでもすぐ心の内をさらけ出してしまうのかもしれない。

 しかしそれで智秋が私に惹かれてくれたのなら、今までよりもっと自分を好きになれそうだ。

 智秋の指が頬をなぞって唇を伝い、意識させるようにそっと動く。

「思い出、作りたくなった?」

 嘘のないやわらかい笑みを向けられて少し笑う。

 楓花を身ごもったあの夜、私は彼に思い出を願った。

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