離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 は、と唇を離したほんの一瞬に吐息がこぼれた。

 果たしてそれが自分のものだったのか智秋のものだったのかわからないまま、苦しいとすら思ったキスを乞う。

 息ができないのにもっと続けたくて、すがりつくように抱き締めた。

「ちあ、き」

 うまく呼吸できないながらも愛しい人の名を呼ぶ。

 私の後頭部に手を添え、噛みつくように口づけていた智秋が至近距離で笑った。

「だめだよ、咲良。こんなときに名前を呼んだら。……止まらなくなる」

 大きな手が私の首の後ろを固定し、頭を上向かせた。

 酸素を求めて薄く開いた唇を塞がれてしまい、ぎゅっと智秋の背を抱く手に力を込める。

< 209 / 235 >

この作品をシェア

pagetop