離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 なにもかもを呑み込まれるような感覚が頭をぼうっとさせていた。

 キスだけでも身体に力が入らず、その場に倒れ込みそうになるのを必死に堪える。

 恥ずかしさを感じたときよりもずっと顔が熱く、全身が燃えているかのようだった。

 ベッドに行かないの、と心の中で思っていても声を封じられているせいでなにも言えない。

 智秋は私が口を開こうとすると、わざと意地悪するように舌を差し入れた。

 さっき飲んだカクテルの味はすっかり消え、智秋の温度を刻みつけられる。

「ん、ゃ」

 寝ぼけているときの楓花に似た声が唇の隙間から落ちた。

 初めて智秋と結ばれたときにもこんな声を出していただろうか?

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