離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
「どうせ全速力で帰ってきたんでしょ? ふーちゃんに会いたくて」

「バレたか」

 くすぐったそうに笑った智秋と一緒にリビングへ向かう。

 彼は私に楓花を預けると、キッチンに姿を消した。すぐに戻ってきたその手には、タッパーがいくつかある。

「夕飯にどうぞってまかないもらったよ」

「え、またもらったの? 明日お礼言わなきゃ」

 厨房を担当する料理人たちは、たちばなの最古参といってもいい。だから智秋のことを坊ちゃん扱いする人が多く、彼もその妻の私も、楓花のことも目をかけてくれる。

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