離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 女将と若旦那である私たちが忙しいだろうからと、こうしてわざわざまかないを用意するのも彼らの厚意のひとつだ。

 タッパーを開けると、やわらかく煮たかぼちゃに鶏そぼろを甘辛くしたあんかけがかかったおかずが入っていた。ふわっと上品な出汁の香りが漂い、空腹を刺激されてお腹が鳴る。

「こっちのタッパーがいわし。これはほうれん草のおひたし。漬物もくれたよ。瓜とナスだって」

 智秋がひとつひとつ説明してくれるせいで、ますますお腹が空いてしまう。

「こんなにいっぱいもらって……。いつも申し訳ないな。そのうちお礼しなきゃね」

「余り物で作ってるから気にするなって言われるだけだよ。昔からそうだ」

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