離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 たちばなという旅館に働く人々は横の繋がりが強いとしみじみ感じる。

 歴史のある高級旅館という知識しかなかった頃は、やはり働いている人たちも近寄りがたい雰囲気なのだろうとなんとなく思っていた。

 しかも彼らはとても温かい。突然現れた私にも親切にしてくれるから、毎日頑張れる。

 とはいっても、このたちばなで一番私に甘いのは夫の智秋だ。

「夕飯の支度するよ。咲良は座ってて」

「私も手伝うよ。智秋だって今日は疲れたでしょ」

「いい子で甘やかされておいて。楓花みたいに」

 腕の中の楓花を見ると、むにゃむにゃ口を動かしている。いい匂いがするとわかっているのだろうか。

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