離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 はしゃぐ気持ちもわかるぐらい、素晴らしい雰囲気の一室だった。

 たちばなは外観からして歴史を感じさせる純和風のつくりをしていた。

 入口のもみじは残念ながら季節を外したせいかまばらに散っていたが、私と母の心を沈ませはしなかった。親子ふたりでの旅行、それも特級の旅館での時間を思うだけでなんでも輝いて見えたからだ。

 創業五百年になるとは思えないほど中はバリアフリーが整っており、ロビーは大理石、天井にはシャンデリアと和と洋が美しく調和している。

 私たちのいる部屋も和室のつくりでありながらベッドが備えつけられている。最近腰が痛くなったという母には布団よりもこちらの方がありがたいだろう。
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