吉良くんの弱愛なところ。
ぱっと歩き出した、けれど。
────グイッと腕を引かれ、その反動で、吉良くんの華奢だけど広い胸板にすっぽりと包まれる。
「きき吉良くんんんん?!」
な、なぜわたしは吉良くんに抱きしめられてるの?!
ひとりで焦ってパニックになっていると。
突然、とんでもないスピードの自転車が、わたしの横すれすれをシャーーッと通りすぎた。
ちょうど、わたしがさっきまでいた場所に。
速?!と、もう豆粒のように遠くなった自転車に目を奪われていると、頭上で吉良くんのイケボが降ってきた。
「……ほんっと、危ねえ、轢かれんじゃんバカ」
安心したように安堵の息をつく吉良くんの、予想外の言葉にキュンと胸が高鳴る。
怒ってるのか、安心してるのか、それらが混じり合ったような声は、心臓にわるすぎる。