吉良くんの弱愛なところ。
「これ、受け取ってくれる?」
なんだかバレンタインみたいだな、と思いつつ、ハンカチを控えめに差し出した。
告白したかのようなドキドキに、なんだかこちらが恥ずかしくなる。
なるようになれ!とやけくそになりながらも、どうしても怖くて視線が下がってうつむいてしまう。
長いようで短い数秒の沈黙のあと、吉良くんの低めの声が落ちてくる。
「……おれのために、わざわざ買いに行ったの」
そんなの、わざわざ聞かなくてもいいのに。
そう思うのに、わたしの口からはするすると言葉が出てくる。
「うん、だから、声かけられたときは嬉しいよりもびっくりが大きかった」
「それで、あんなに不審な動きしてたんだ」
「ううっ、恥ずかしいから忘れてください……」