吉良くんの弱愛なところ。
「別に、深い意味はないけど」
彼は、慎重に言葉を選ぶように言う。
「……うん」
「でも、なんか嬉しかったから受け取った」
「うん」
「それじゃ、理由にならない?」
嬉しかった、とはっきり口にした吉良くん。
それだけでわたしがどれほど喜んでいるか、わかっていないと思う。
「……ううん。そっかあ、ありがとう」
わたしの言葉を聞いて、照れくさくなったのかもしれない。
吉良くんはそっぽを向いて歩き出した。
「……もう、ひとりで突っ走ってケガするなよ」
「わかった! 吉良くんのいるところでケガする!」
「なんにもわかってねえじゃん」
くす、と笑った吉良くん。
いま彼がどんな表情をしているのか無性に気になって、慌てて横に並ぶ。