吉良くんの弱愛なところ。
「えへへ、ごめんね、こけてないよ。ちょっとだましちゃった」
「……心配した俺の良心返して」
「返さないよ。ありがたく受け取っておくね?」
「枢木のばか」
「えへへ、そうかも」
「……褒めてないし」
上機嫌になって、スキップしながら吉良くんを追い越す。
呆れたような視線を向けられた気がしたけど、ぜんぜん気にしない。
「……調子乗ってたら今度こそこけるよ」
「そんなに鈍臭くないもん!」
「どーだか」
「あ、いまうそだとか思ったで……っぎゃあ!」
「もー……ほんっと、ばか」
そのあとほんとうに転んでしまったわたしに、彼は昨日と同じように駆け寄ってくれた。
ちゃんと彼に叱責されちゃったけれど、間近で吉良くんのお顔を眺められたからプラマイゼロだ。
ばか、なんて言いながらわたしを見捨てない彼に、さらに惹かれた1日だった。