カクレンボ
「なにが嫌なの?炭酸の」

「なんていうか、昔飲んだときに苦手だったから、それを引っ張って今も飲んでないんだと思う」

「もったいねえ、飲んでみりゃいいのに。俺の飲むか?」

 空がピンク色の炭酸水の入ったコップを雪にスライドさせた。

「華のやつと色違うけど、何味なの?」

「味は一緒、色が違うだけ」

 雪はわたしの簡略な説明に2、3回頷いた。

「2つとも飲んでみていい?」

「俺は問題なっしだぞ」

「わたしも、別にいいけど」

 ふたりの返事を聞き入れてから雪は空、わたしの順にコップを口に運んだ。

 男女だからという理由で間接キスはなんとなく懸念があるかもしれないけど、わたしは空と雪では特に気にしない。逆に言えば、他の男子はやっぱり抵抗がある。あんまり他の男子と関わりがないからそんなことにはならないだろうけど。

「あ、意外と飲めるかも」

「ほんと?良かったじゃん」

 なんだか嬉しかった。わたしは自然と笑みが溢れた。

「シャンメリーデビューくるか?」

 空も雪に期待を向けている。

「うん。飲めるかも」

 雪の口角が上がった。それだけで嬉しくなって、わたしは雪以上の笑みが出てくる。

 空が未使用のコップにわたしとおなじ黄色いシャンメリーを注いだ。  

「華おそろい。これビールみたいだね」

 雪がグラスを持ってわたしに近づけた。

「かんぱーい」

 わたしは2つのグラスを鳴らさせて一口飲んだ。

「4人で同じもの飲んだ記念+クリスマス記念!はいチーズ!」

 桜がいつの間にか用意していた自撮り棒でわたしたちを撮った。

「自撮り写真珍しくない?今もまでなかった気がする」

 わたしは今までの記憶を探った。単純に自撮りに慣れてなかったっていうのもあるかもしれない。

「言われてみればそんな気がする」

「お前いつそんなの覚えたんだよ」

 空が肘で桜をつついている。桜はスマホをいじって空に見向きもしない。

「無視はひどいだろ」

「ごめんごめん。空が目瞑ってるのが面白くて」

 桜は堪えていた笑いを吹き出して私達に今撮った写真を見せてきた。

「どんな表情なのこれ。どうやったらこんなになるの」

 雪が苦笑している。わたしも笑ってしまった。わたしはツボが浅いから、笑いを誘うものにはすごく弱い。空は覗き込むようにして見たあと、自分で自分の顔をみて大笑いしている。
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