カクレンボ
「えー早いよ。もっと運動しなきゃだね」
「うん。いつか頑張る」
「それやらないやつ!」
 膝に手をついて呼吸を整えることで精一杯だから、桜の言葉に反応する余裕も失われつつある。とことん自分の運動不足を実感する。
「見てよ!すごいたくさんある!」
「このプリンおいしそう」
 見ただけでもほっぺたが落ちそうなくらい美味しそうなスイーツがたくさんあって選べない。
 今は、女子だけ。わたしたちのなかではこうして二人だけになるっていうのはあんまりない。学校以外での話だけれど。だからこれが貴重で4人でいるときとはまた違う楽しさがある。
「まだ結構早いかな」 
「確かに。まだ3時半だもんね」
 わたしは腕時計にめをやる。
「よし、ちょっとお散歩して帰りますか」
「お散歩?」
 さっきあんな人混みの中を走ってきたのに、今からお散歩だなんて。桜、そんなに運動していないはずなのになんで私よりも体力あるの?
「わかった!」
 桜はぽんっと手を叩くと、「乗りな」
と背中を見せてきた。わたしは無言で桜の言うとおり背中に身を委ねる。桜の背中、温かい。
「華、前より増えた?」
「え?増えてないと思う、けど」
 もしかして運動してないから…。体重計にあまり乗ってないから心配。
「やっぱ運動しないとだよ?」
「うん。頑張ってみる。」
 桜の背中、温かい。昔の頃を思い出す。
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