カクレンボ
 桜と出会ったのは小学校1年生の春。最初は怖くて自分から話しかけれなかった。席もわたしの後ろだった。威圧感が、すごくていつも背中は熱い視線が集まっているような気がしてた。

『華ちゃん?これ落としてるよ』

 ある日、わたしは消しゴムがなくて探しているところを、桜が拾ってくれた。 

『あ、ありがとう』  

 目を合わせることさえも怖くて、どこを見たらいいかわからない。
 
『華ちゃんの椅子の真下にあったよ?ちゃんと見なきゃだめだからね?』

 バカにしてるのか、冗談ぽく言って和ませているのか、当時の私に知り得るような脳のキャパはなかった。

『うん。わかった』

 お姉さんみたいな人だと思ったのが、最初話してみたときの感想。全然怖くなくて、桜についていた偏見の札が、するりと取れたような、そんな瞬間だった。

『さくらちゃん、ここ教えてほしいんだけど、いいかな』

『いいよ!なんでも言ってきなさい!』

『華バイバイ』

『バイバイ、さくらちゃん』

 いつの間にか、桜は私のことを呼び捨てするようになった。

 わたし、いつから桜って呼ぶようになったんだろう。飽きるほど言ってきた。『さくらちゃん』って。なんで、呼び捨てにしたんだろう。
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