カクレンボ
私も、大人になれるかな…。みんなに寄りかかるだけじゃだめなのかもしれない。
「華もでしょ?」
「いや、わたしは空のこと好きじゃ…」
「違う。雪のことよ」
なんだか、痛いところを突かれたようだ。
「別に、好きじゃないよ。もちろん友達としては好きだけど」
わたしは、恋情を煩ったことがない。男子にドキドキしたことなんてないし、告白されたこともない。
「それ、嘘だよ」
思わぬ返事が帰ってきてわたしは思わず顔を桜ちゃんの方にむけた。
「うちに、嘘は通じないよ?何年だと思ってるの。見てたらわかるの。ああ、雪のこと好きなんだなって」
自覚のないものほど気付かされる。でも私は首を振る。
「ま。いずれ気付かされるから」
悪い笑顔を浮かべて桜ちゃんは前を見た。いずれ…か。もう気付かされたような気がするけど。
「お、ついたついた!」
そういえばずっとどこに向かってたんだろう。見覚えのある道を通っていたけれど途中から見たことのない道だった。
「ここね。うちがよく一人で来るとこなの。落ち込んだときとか、苦しいときに。自然から見る街いいでしょ?」
周りには木がある。木漏れ日のスポットライトを浴び、視線の先には街が広がっている。
「ここに来たら、冬の寒さも、今まで悩みだって、全部消えてくれるような気がするの」
桜ちゃんは木製のベンチに腰を下ろした。横をぽんぽんと叩いたところに座る。
「ここから初日の出とか見たらすごくきれいに見えそうじゃない?」
「方角的にこっちは日の入りだよ。それに初日の出はマンションから見たほうがきれいに見えるはず」
名案だと思ってたものが、ものすごい速さで論破されてしまった。確かに3時半の時点で西陽が傾いている。
「日の入りは見えるかもね」
「デザート大丈夫?」
「え?あ、まぁ大丈夫でしょ。冬だしそんなに溶けるようなものも買ってなかったでしょ?」
「うん」
「なら大丈夫。どうせ5時にはもう真っ暗なんだから」
さくらちゃんは袋の中を流すように見たあと、フェンスに手を置いて思い切り息を吸った。
さくらちゃんの隣に行き、私もフェンスに手を添えた。
「キレイ」
思わず口からそう言葉が出てきた。初めて雪を見た子供みたいに目をキラキラとさせる。いつの間にか滴っていた雪たちが街の景色に色を加えてゆくのが幻想的だ。
「やっほー!」
叫んだ声はやまびこのように帰ってくるわけではなく、どこまでも駆け抜けていった。
「華もでしょ?」
「いや、わたしは空のこと好きじゃ…」
「違う。雪のことよ」
なんだか、痛いところを突かれたようだ。
「別に、好きじゃないよ。もちろん友達としては好きだけど」
わたしは、恋情を煩ったことがない。男子にドキドキしたことなんてないし、告白されたこともない。
「それ、嘘だよ」
思わぬ返事が帰ってきてわたしは思わず顔を桜ちゃんの方にむけた。
「うちに、嘘は通じないよ?何年だと思ってるの。見てたらわかるの。ああ、雪のこと好きなんだなって」
自覚のないものほど気付かされる。でも私は首を振る。
「ま。いずれ気付かされるから」
悪い笑顔を浮かべて桜ちゃんは前を見た。いずれ…か。もう気付かされたような気がするけど。
「お、ついたついた!」
そういえばずっとどこに向かってたんだろう。見覚えのある道を通っていたけれど途中から見たことのない道だった。
「ここね。うちがよく一人で来るとこなの。落ち込んだときとか、苦しいときに。自然から見る街いいでしょ?」
周りには木がある。木漏れ日のスポットライトを浴び、視線の先には街が広がっている。
「ここに来たら、冬の寒さも、今まで悩みだって、全部消えてくれるような気がするの」
桜ちゃんは木製のベンチに腰を下ろした。横をぽんぽんと叩いたところに座る。
「ここから初日の出とか見たらすごくきれいに見えそうじゃない?」
「方角的にこっちは日の入りだよ。それに初日の出はマンションから見たほうがきれいに見えるはず」
名案だと思ってたものが、ものすごい速さで論破されてしまった。確かに3時半の時点で西陽が傾いている。
「日の入りは見えるかもね」
「デザート大丈夫?」
「え?あ、まぁ大丈夫でしょ。冬だしそんなに溶けるようなものも買ってなかったでしょ?」
「うん」
「なら大丈夫。どうせ5時にはもう真っ暗なんだから」
さくらちゃんは袋の中を流すように見たあと、フェンスに手を置いて思い切り息を吸った。
さくらちゃんの隣に行き、私もフェンスに手を添えた。
「キレイ」
思わず口からそう言葉が出てきた。初めて雪を見た子供みたいに目をキラキラとさせる。いつの間にか滴っていた雪たちが街の景色に色を加えてゆくのが幻想的だ。
「やっほー!」
叫んだ声はやまびこのように帰ってくるわけではなく、どこまでも駆け抜けていった。