柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた
翌朝、目が覚めリビングに向かうと蓮二がいた。
朝の挨拶をすることなく、私は朝食を作る準備をしていた。そして、2人分の朝食を作り彼の前に出すと、彼が口を開いた。
「怜、バイト辞めろ」
私は下唇を噛んだ。
「それは…」
「出来ないっとでも言うのか?金の心配をして言っているのか、それとも奴等のことを気にして言ってるのか?どっちだ?」
蓮二が言う奴等とは風翼の人だろう。私はバイト先で先輩と知り合ったことを話してしまっている。
「先輩達のことは関係ないです」
私がこうして住む場所を持ち不自由無く暮らせるのは蓮二のおかげ。蓮二がいるから生きている。
それでも、自分のことだから少しでも自分でどうにかしなくちゃと思い高校に入ってバイトをしていた。誰かの迷惑や、お荷物になりたくなかったから。
「金のことならお前が心配することはない。他にどんな理由があろうがバイトなんて辞めろ。いいな」
「……はい」
私は蓮二に逆らうことは出来ない。だから、彼がダメと言えば辞めざるおえない。私は目の前の朝食を食べるも何も味がしなかった。
そんな私の様子を見ながら、蓮二は話を続ける。
「今日からこっちに住む。登下校は俺と一緒だ。分かったな」
「はい」
拒否権なんて、私にはないのに。それを分かって蓮二は私に返事をさせるような言い方をする。私は朝食を済ませると制服に着替える。
昨日が週末だったら顔を合わせなくて済んだのに、運悪く今日は木曜日。確実に今日と明日は七絃に会うことになる。
何をどう説明したらいいのか分からない。気分が乗らないまま身支度を済ませていると蓮二は既に玄関にいた。