柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた
「遅い」
蓮二は烏間《カラスマ》高校に通う2年生。
対立している風翼と白骸は高校自体別々だ。因みに私は高校1年。
「ごめんなさい」と謝ると蓮二は家を出て、その後に続くように私も家を出て鍵を閉める。
家を出ると下には黒塗りの車が停まっている。それが、白骸の総長専用の車だとは聞かずとも見て分かった。
運転手が私達に気づくと「おはようございます」と言って蓮二に挨拶をする。蓮二は簡単に「あぁ」とだけ返し車に乗り込む。私もその車に乗る。
私達が乗ったのを確認すると車は行き先を聞くことなく発進した。
「怜」
静かな車内で蓮二の声が異様に響く。
「はい」
「お前、友達がいるみたいだな」
ビクリと肩が震える。
「…います。七絃に、何か…したの?」
自分でも声が震えているのが分かる。
「まだ何もしてない。それはお前次第だ」
「私、次第?」
「怜が俺を裏切るようなことをすれば、友達は酷い目に合うことになる。友達に手を出して欲しくなかったら俺の言う事を聞け」
「…私は、蓮二を裏切るつもりはありません。私には蓮二しかいないから」
「フッ、いい子だ」
蓮二は私の頭を優しく撫でる。私には蓮二の撫でる手が心臓を鷲掴みされている感覚にしかならなくて、恐怖しかない。
車を数分走らせるとツキ女の校門の前に車が停車した。運転手にお礼を言い、私は車から出ると何故か蓮二までも車から出てきた。
蓮二の存在に気づいたツキ女の生徒は黄色い声を上げると共に、私に鋭い視線を送る。蓮二は整った顔立ちをしていて髪はシルバーに染められている。アクセサリーを付けているのはシルバーのネックレスくらい。
こんなイケメンを女達が見逃すわけがない。
「ちょっと、あの制服、烏間高校の人!?」
「それより、あの人、白骸の総長の荒川蓮二さんじゃん!」
「え、なんであんな淫女といるわけ?」
昨日といい、今日といい私のことで色々と騒がれる。本当だったら何事もなく平凡な高校生活を送りたかった。
でも、それを叶えることが出来なかったのは、自分が蒔いた種のせい。