柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた
「風翼と抗争するって本当ですか?」
質問をした瞬間ピシャリと空気が凍りついた。
聞いてはいけないことだったと思うにはあまりにも遅すぎた。
「誰から聞いた?」
那智さんの表情や声が怖い。
「……ッ…。風翼の人が、そう言ってました」
「あー、アイツ等なら一般人にでも言うだろうなー」
海さんは蔑んだ目で言い放つ。
「怜は気にするな」
「でも、」
「言い方を変える。怜が関わっていいことじゃない」
「那智、いくらなんでも言いすぎだろ」
那智さんは海さんを見て言う。
「本当のことだ。怜はこれ以上俺達の問題に関わってはいけない。危ない目に合うのは怜だ」
「それはそうだけどよ」
空気を悪くしてしまった。私は学習能力のない人間だ。こんなこと聞いてはいけないと分かっていたのに。
私がこれ以上入る隙間はどこにもないのに。
私は2人を見て言う。
「出過ぎた真似をしてすみませんでした。これ以上は何も聞きません」
2人を安心させる言葉を考えるのに、こんな言葉しか出てこない。大丈夫、分かっていたこと。私が邪魔な存在であるっていうことを。
私は話を逸らすように話題を変える。
少しでもこの空気を緩和させようと取り繕った。
2人は必死に話題を変えようとしていた私に察してくれてか、先程と変わらぬように笑顔で話をしてくれた。
そして、「そろそろ戻るぞ」と那智さんが言い、私達はドアを開けるとすぐさま蓮二が私に対し「帰るぞ」と言う。
「分かりました」
そう、返事をして那智さんと海さんに別れを告げて蓮二の後ろを歩く。車に乗ると真っ直ぐに家に帰宅する。
学校に行って白骸のアジトに行って帰宅という、この生活が1ヶ月続いた。
風翼のアジトに行った後からは、風翼はツキ女に来ることも無く、何も関わりがなかった。