柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた
白骸
圭哉くんに白骸と風翼が抗争をすると聞かされていたが、その様子は全く無かった。
白骸が動く様子も見られず、私がアジトに行かない日などどこにもなかった。
圭哉くんがデタラメを言ったとは思えないけど、嘘のように何事もない。
それはそれでありがたいこと。喧嘩をすれば少なからず誰かは怪我を負うことになる。人が人を傷つけ合う姿なんて見たくもない。
私は蓮二にバイトを辞めるように言われたあの日からバイトに行っていない。店長に連絡をして辞める旨を伝えたから。
ちゃんと話していないため、申し訳なく思うけどバイト先に行くことを蓮二は許さないだろう。
バイトをせず白骸のアジトに通うようになっていた。
学校はいつも通りで七絃とも普通に接している。そして、ある時、学校中に珍しく蓮二からメールが届き今日は先に家に帰れとのこと。
これまで蓮二が迎えに来ないということは無かったから、何かあるのかもしれない。
「ねぇ、怜」
「ん?なに?」
スマホから七絃に視線を移す。
「今日さ、カフェ行かない?」
蓮二が送り迎えをするようになって初めて七絃からの誘い。蓮二のことで私に気を使わせてしまっていたことを思い知らされる。
「うん、行こう」
「え、いいの?」
「大丈夫だよ、ちゃんと連絡はするから。それに私も行きたかったから。七絃とカフェに」
ニコッと笑って見せると七絃も嬉しそうに笑ってくれた。