首取り様1
そこにも草木が茂っているだけでなにかがあるようには思えなかった。


山の中まで入ってしまえばまだわからないが、ここは山肌が見えているだけだ。


もしそんなところに地蔵の頭部があれば、石みたいに転がって道路まで落ちていてもおかしくない。


「おかしいな」


探し始めて1時間が経過するころ、大輔が額ににじむ汗を拭って手を止めた。


さすがに男子3人も疲れてきたようで、慎也と明宏は木陰に座って休憩していた。


大輔はさっきまで土を掘り起こしたりして探しものを続けていた。


道具なんて何も持ってきていないから、服も手も泥だらけだ。


「ねぇ、やっぱりここにはなにもないんじゃない?」


太陽はそろそろ真上に差し掛かっている。


炎天下の中探し続けていたら、体が持たない。


しかし、大輔はそんな春香の声も耳に入っていなかった。


春香の頭部をここで見つけたときも、大輔は不思議と呼ばれているような感じがしてここまでやってきたのだ。


そして今も、なにかに呼ばれているかのような感じがしてならない。


胸騒ぎがするのだ。


再び土を堀り返し始めた大輔を見て、春香はため息をついきつつ手伝いに向かった。


「ここを掘ってなにも出てこなかったら、一旦ファミレスに戻ろうね」


大輔に向けてそう言い、素手で土を掘り返し始めたのだった。
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