首取り様2
「こんなところにあったのか」


大輔が青ざめた顔で押入れの中から明宏の頭部を取り出した。


一瞬、佳奈にはその頭部が目を開けてこちらを睨んでいるように見えた。


『どうしてイケニエを押し付けなかった』と、被弾されているように感じられて視線をそらす。


このまま明宏の頭部を持って帰れば、明日の朝には明宏は目を覚ますことになる。


また冷たい態度を取られるかもしれない。


そう考えて一瞬だけ、このまま頭部を置いて帰ってしまえればいいのにと考えた。


何を考えてるの!?


我に返り、自分の考えに体が震えた。


いくら明宏との関係がギクシャクしてしまっているからと言って、頭部を放置して帰ろうだなんて!


だけど、同じイケニエになった人間になら、そういう行為ができてしまうということなんだ。


仲間割れした後、相手を見捨ててしまうことは簡単だ。


「佳奈、どうしたの?」


春香に声をかけられて視線を向けると、2人はすでに部屋を出ようとしているところだった。


明宏の頭部は大輔が上着にくるんでしっかりと抱きかかえている。


それを見てホッと胸をなでおろしたのだった。
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