首取り様2
それぞれの家からは確かに生活している雰囲気があるものの、窓もドアも開かず、誰かがいる気配もない。


生きながらに死んでいった都市のようだ。


「この先には公園があるくらいか」


明宏は呟いて足を止めた。


路地の奥には少し大きめな公園があり、そこで行き止まりになっているみたいだ。


「公園は確認しないの?」


春香がそう言って振り向いたときだった。


明宏の後ろに大きな黒い影がぬーっと立っているのが見えた。


目も鼻も口もないそれが、ニターッと笑ったような気がした。


「危ない!!」


咄嗟に叫ぶ春香。


黒い化け物がそれを同時に刃物になった手を振り上げた。


明宏は反応が遅れ、ようやく後方を振り向いたところだった。


目の前に黒い化け物がいる。


今自分を殺すために腕を振り上げている。


そう理解しても体は全く動かなかった。
< 82 / 194 >

この作品をシェア

pagetop