イカれ恋人
二人でテレビを見ていた。

初めて交わった日で、俺は幸せの絶頂。

ぼうっとした顔でテレビを見ているあいつの横顔はすごく綺麗で可愛くて愛しくて、ずっと眺めていたいくらいだ。


「………犯罪者」


ん?と聞き返すと、驚いたのかビクリと震える。

小さな声で「なんでもない」って。



ふとテレビに視線を移すと、映っていたのは確かに犯罪者だった。

たくさんの女性を殺して、その手首を切り落としコレクションしていたっていう変態野郎。

しかも手の爪に、赤いマニュキュア塗って持ち歩いていたってよ。

まったく、反吐が出るほどの最低な男だ。



さてはこいつ。

この変態野郎の気持ちが知りたいとか何とかで、その手首持ってきてくれとか言うのかな。



視線を戻すと、熱心にテレビに見入っているようだ。

嗚呼、なんて奴だ!

やはり俺の恋人はイカれてるんだな。
< 5 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop