彼、予約済みです。
しばらくすると席替えをすることになり、俺は日南さんの隣に、と思ったが別の女子に捕まってしまった。

「日南さんってぇ〜、しっかりした体してますよねぇ〜。何かスポーツとかやってるんですかぁ〜?」

「⋯⋯大学の部活でバスケやってるよ」

日南さんとは比べ物にならないくらい厚く塗った化粧とキツい香水の匂いに吐き気がする。

隣の女子を軽くあしらいながらジュースを飲んでいると、ふと日南さんのことが気になり日南さんがいる方を見る。

(は⋯⋯?)

見ると、表情が固くなった日南さんと、その日南さんの手を満面の笑みで握っている宇野がいた。
その光景を見た瞬間、自分の中で抑えていた何かが切れる音がした。

席を立ち、その方へ向かう。

そして静かに口を開いた。

「お前今日ちょっと調子乗りすぎ。日南さん嫌がってるだろ」

我ながらよく感情を抑えられたと思う。

日南さんをチラッと見ると、潤んだ目がこちらを見ていた。

「えっ実栗ちゃん嫌だった!?」

その宇野の言葉に日南さんは遠慮がちに言う。

「嫌というか⋯⋯手は離して頂けるとありがたい、です」

その言葉に宇野はショックを受けたようで少し不憫に思ってしまった。

「日南さんごめんね、宇野も悪気があってやってる訳じゃないんだ」

悪気がないから尚更タチが悪いんだがな。

「い、いえ⋯⋯!大丈夫、です」

俺の言葉に慌てて返す姿が可愛くて、笑みがこぼれてしまう。

「それならよかった」

そう俺が笑って返すと日南さんも言葉の代わりに笑顔で返してきた。

(ああ、可愛い)
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