彼、予約済みです。
しばらくすると注文したものが全て机に運ばれてきた。

湊さんの奢りということが気になって、手をつけられないでいると湊さんはにこりと笑って言った。

「気にしないで食べてよ。俺甘いもの苦手だからショートケーキ食べれないし」

そう言って湊さんは静かにコーヒーを飲む。

かっこいい人は飲むものまでかっこいいのか。

「それじゃあ⋯⋯いただきます」

「はい、どうぞ」

ケーキを一口、口に入れるとクリームとスポンジの甘さが口いっぱいに広がって、幸せな気分になる。

「ははっそんな幸せそうに食べてくれるなんて、奢りがいがあるなあ」

そう言われてゆるゆるの締りのない顔をしていたことに気がつき、慌てて元に戻す。

そして緊張して忘れていたことを思い出した。

「湊さん、昨日は本当にすみませんでした」

湊さんは私に謝ってくれたけど、本当は私が悪いのだから謝らなければならない。

「謝らないでよ。俺が焦ったのがいけないんだし」

焦ったとは。

そう思っていると、湊さんは察したのか「昨日を逃したらもう話せないような気がしてね。だからつい⋯⋯」と言った。

申し訳なさそうに縮こまる湊さんが可愛くて笑みがこぼれそうになる。

「⋯⋯私、誰かを好きになるのって初めてなんです」

「え⋯⋯」

我ながら急に何言ってるんだと思う。

だってこんなの告白と変わりないもん。

でももう止まれない。

「私、湊さんが好きです」
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