彼、予約済みです。
言っていることがわからなくて聞き返してしまう。

「⋯⋯だから、日南さん、俺のことは名字で呼ぶのにハルのことは“ハルさん”って呼ぶじゃん」

何それ。

ちょっと可愛すぎやしませんかね。

いや、可愛いって言うのは失礼かもしれないけど。

「ハルさんは⋯⋯すみちゃんがそう呼ぶから移っちゃっただけであって、特に深い意味はないですよ?」

そう言っても湊さんはむくれたままだ。

「⋯⋯優海、さん?」

そう言うと勢いよく湊さんがこっちを向いた。

「⋯⋯もう一回」

まさかのリクエストに動きが固まってしまう。

でも期待の眼差しを向けられたら嫌とも言えないのでもう一度。

「優海さん」

「はぁ〜⋯⋯無理、心臓に悪い」

そう言う湊さんが可愛くて、意地悪をしたくなる。

「私には言わせておいて、湊さ⋯⋯優海さんは、私のこと名字呼びですよね」

「いや、それは⋯⋯」

私の言葉に湊さんが慌てる。

「んと⋯⋯実栗、ちゃん」

“さん”ではなくて“ちゃん”と呼ばれたこともあり顔がどんどん熱くなってくる。

「えっと⋯⋯日南さん、しばらくは今のままにしませんか」

「⋯⋯賛成です」
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