彼、予約済みです。

その後も少し話し込んでいると思ったよりも時間が経っていたようで、マネージャーらしき人が湊さんのことを呼びに来た。

｢優海ー、そろそろ戻りなよー？｣

｢おー｣

もう行ってしまうのかと思い、落ち込んでいると、突然頭を撫でられた。

｢また、夜連絡するから｣

“また”その簡単な言葉にこんなにも胸が踊るなんて、恋ってすごい。

｢⋯⋯優海、その子は？｣

｢ん？ああ、俺の好きな子｣

予想もしていなかった湊さんの紹介の仕方に驚く。

｢ふーん⋯⋯はじめまして。マネージャーの椎名澪(しいなみお)です。優海がいつもお世話になってます〜｣

なぜかその自己紹介に違和感を覚える。

｢そういうのいいから。じゃ、日南さんまたね｣

｢あっはい。また｣

行ってしまった湊さんの背中を見つめているといつの間にかすみちゃんが隣に立っていた。

｢うわぁ⋯⋯あのマネージャー、いやな感じ〜｣

どうやら一部始終を見ていたらしい。

｢絶対彼氏の近くにはいて欲しくないタイプの女だわ｣

その言葉の意味がわかることになるのはもう少し先のことだった。