彼、予約済みです。
夜9時半。

部活が終わり、友達と飯を食って家に帰ってくる。

一人暮らしだから帰ってきてもおかえりとか言ってくれる人はいない。

「疲れた⋯⋯」

帰ってくると疲れが一気に押し寄せてきて力が抜ける。

「とりあえず風呂入って、レポートの続きやらないと⋯⋯」

そんなことを考えていると、服のポケットに入れていたスマホが震える。

画面に映し出された名前を見て即座に電話に出た。

「もしもし!?」

『えっと、こんばんは。日南です』

声を聞くだけでさっきまでの疲れが吹き飛ぶ気がする。

「どうしたの?こんな時間に」

今日はなんの約束もしていなかったはず。

『その、声が聞きたくて⋯⋯』

可愛い、優勝。

俺の彼女(予定)が可愛すぎる。

『あっいきなり電話なんて迷惑でしたよね。すみません、すぐ切ります』

「ちょ、待って。全然迷惑じゃないから」

本当に切られそうだったので急いで止める。

『でも多分、今帰ってきたばかりですよね?』

「ゔ⋯⋯まあ、うん」

『やっぱり切ります』

彼女は変なところで真面目だ。

そんなところが可愛いのだけど。

「切る前に一つ聞きたいんだけどさ。日南さん、夏休みってもうすぐだよね?」

『え?はい。ちょうど来週からですけど』

タイミングバッチリだ。

「一緒に海に行かない?」
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