彼、予約済みです。
「日南さんもしんどかったら寝ていいからね」

帰りの電車の中、湊さんは私に優しくそう言った。

一日中遊んで疲れ切ったすみちゃんとハルちゃんは二人肩寄せあって爆睡中。

すみちゃんの隣にいる私も電車の揺れが心地よくてうとうとしていた。

「い、いえ。私は起きてます」

せっかく隣に湊さんがいるんだ。寝るなんてもったいなさすぎる。

「そう?でも眠かったら遠慮なく俺の肩に頭乗せていいから」

そう言いながら湊さんは自分の肩をポンポン、と叩く。

湊さんの優しさに胸がときめいてしまう。

「⋯⋯湊さんは、優しすぎます」

そう私がポツリと言うと、湊さんは意味がわからないようで首を傾げた。

「だって、私のわがままにも付き合ってくれるし。私に甘すぎるんですよ」

まだ彼氏彼女になる自信が無いから待って、という私のお願いにも湊さんは文句も言わずに頷いてくれた。

こんなに優しい人がいていいわけが無い。

そう思っていると、湊さんが「だって」と、呟いた。

「好きな人には甘くなるものでしょ」

その一言で体温が急上昇する。

きっと私の顔は真っ赤なのだろう。

もう耐えられない。

「わ、私、もう寝ます!」

そう言って、隣にいたすみちゃんの肩に頭を寄せる。

すると横から「ふっ」と笑う声が聞こえた。

そして、優しい声で「おやすみ」と湊さんが言うのがわかった。

⋯⋯やっぱり、少しだけ湊さんの肩に頭寄せようかな。
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