甘い悪夢へようこそ
だが、その親戚の顔や、自分が今までどんな家でどんな暮らしをしていたのか、それが全く思い出せない。まるで頭の中に霧がかかっているかのように、何もわからないのだ。

「でも、私はこんな素敵なドレスは持っていなかったはずだし、こんなネグリジェも着ていなかったはず……」

ではここは一体どこで、誰がミアにネグリジェを着せたのか?ミアは恐怖と好奇心を心に抱きながら、ドアノブに手をかける。鍵を外側からかけられているわけではなく、ドアは何の抵抗もせずに開いた。

部屋の外にあったのは、長い廊下だった。廊下は薄暗く、足元にハロウィンで飾るようなかぼちゃのランタンが並んで置かれている。

「可愛い!そういえば、もうすぐハロウィンだもんね」

ミアの頭にふと、赤く色付いたカエデの葉が浮かぶ。カエデの木がたくさん並ぶ広場がある村に住んでいたな、とミアは思い出す。

「このまま色んなものを見ていけば、少しずつ思い出すのかな」
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