短編小説集
コタツ3
「お母さーん、薬ちょーだーい!」
トントンーーー
お母さんの部屋のドアをノックしても声をかけても返事がない。
おかしいな…
部屋にいるはずなんだけど。
カチャーーー
「お母さーん、入るよー」
ドアをゆっくり開けもう一度、声をかけようとした口がそのまま固まってしまった。
な、何?
ここどこよ?
そこは見慣れたお母さんの部屋ではない、煌びやかな部屋が広がっていた。
「は?へ?な、何?ここはどこ?」
「あーら、あなた来ちゃったの?」
「お、お母さん!ここどこ?」
コロコロと楽しげに笑っていたお母さんが、ゆったりとした動作で立ち上がる。
そして私の前まで歩いてきた。
「フ、フフフ…」
「何よ、お母さん!ここはどこなの!」
「もー、煩い子ねー。…寝ておしまい」
お母さんが手を私の前にかざした瞬間、フッと力が抜けそのまま身体が崩れ落ちた。
「目覚めた時にゆっくり話すわ。今は風邪を治してしまいなさい」
微かに聞こえてきた声が何を言っているのか分からないまま、私の頭を優しく撫でる心地良い感覚を感じ取った時にはもう、意識が遠のいていた。
お母さんに色々と聞きたい事があったのにーーー