短編小説集
アリス
私はアリス。何故か今、不思議な世界に迷い込んでるの。
本当に不思議な世界なのよ。土手で遊んでいたら目の前に白ウサギが現れて、時計を取り出しながら急ぎ足で私の前を通り過ぎ、生け垣の下の穴にぴょんと飛び込んだの。
それを見た私はワクワクして一緒に飛び込んだわ。
穴から出てみるとそこは童話に出てくるような不思議な世界が広がっていたの。
本当にビックリした。
私に気づいたウサギさんが振り返る。
「キミは誰だい?」
「私はアリス。あなたについて来たらここに来てしまったの」
「そうか。…もとの場所に帰してあげたいが、僕は今、急いでいて」
「じゃあ、その用事が終わったら帰して」
「あぁ、分かった。それまでここにいてくれるかい?」
「ううん、私も着いて行く!」
「分かった。じゃあ行こう」
こうして私はこの不思議な世界をウサギさんと共に歩き始めた。
用事はすぐに終わるのかな?と思っていたけど中々の長旅となり、いつしか私達は結婚していた。
「アリス起きなさい」
ある昼下がり、私の頭の中に突然、お姉ちゃんの声が響く。
「お姉ちゃん⁉︎」
「どうした?」
ウサギさんが目を丸くしながら私に聞いて来た。
「今、私の頭の中にお姉ちゃんの声が聞こえてきたの」
「…そうか。アリス、その声を辿っていけば元の世界に帰れるかもしれないよ」
「帰らないよ。だって私はウサギさんと結婚したんだもん」
私はウサギさんにキスをした。
お姉ちゃん、お父さん、お母さん、帰らない私を許して。
私は今、幸せですーーー