短編小説集
トビラ2
「よしっ!」
と気合を入れ、私は目の前にあるドアノブに手を触れた。
「触れた!感覚はある」
グッとドアノブを握りしめた私は、勢いよく扉を開ける。
「……!」
「………」
しばらく私、思考停止中。
あれ?
あれれ?
「スミマセン、ドア、閉めて貰えますか?」
「あ!ハイ!スミマセンでした」
申し訳なさそうに、困ったような顔をしながら私に声をかけてきた中の人にペコリと頭を下げ、私は扉を閉めた。
ここは、私の家の玄関横。
ある日突然、扉が現れた。
扉を開けたらそこは…、
「トイレ?」
しかも中にいる人は、人間ではなかったような気がするーーー
「気のせい…、だよね?」
チラッともう一度、扉に視線を向けたら
「…消えた?」
これが白昼夢と言うのだろうか?
私はここ何日も、この扉を見ていた。
それらの出来事は夢だったの?
私はボーゼンとお母さんに声をかけられるまで、動けなかった。