短編小説集
サクラの木の下で
「…会いたかった」
「‼︎」
ドックン…
彼の言葉に、胸の鼓動が大きく高鳴った。
私に微笑みかけ、そしてゆっくりと私に手を差し出してくる目の前の男性に胸がギュッと締め付けられる。
「私も…、会いたかった…」
すぐに分かった…
あなたは…
「生まれ変わったその次こそは…」
私達が息絶える間際に言い残した自分のセリフをそのまま、スルリと口から滑らす。
強く身体を抱き締めてくる彼に、私は身を任せた。
懐かしい温もりに眩暈がする…。
「もう、離さない」
彼の言葉に頷きながら、目の前で揺れる滲んだ景色に既視感を感じ切なくなった。
ヒラヒラ…
ヒラヒラ…
あぁ、そうだった。
あの日も…、
サクラの花びらが舞っていたね。