首取り様3
☆☆☆

亮一は智子と同じ学校に通うサッカー部の選手だった。


幼い頃に見たJリーグの試合中継が忘れられず、飽きっぽい亮一なのにサッカーだけはずっと続けてきていた。


プロになるための壁は分厚く高く、そう簡単ではないことは理解している。


それでも目指したい場所があって、県内ではサッカーが強いことで有名なこの高校に入学したのだ。


親元を離れて寮で暮らすことや、先輩後輩の関係など気になることも多かったが、すべては自分の夢のためだった。


実際にこの高校のサッカー部に入部してから亮一はたしかな手応えを感じていた。


さすがに中学までのサッカーとは違う。


お遊びではなく本格的なスポーツとしてそれは成り立っていた。


それが楽しくて最初の一週間はまたたく間に過ぎていった。


寮生活とか、先輩後輩の関係とかを考える暇だってなかったくらいだ。


変化が出始めたのはサッカー部に入部してから一週間以上が経過したときのことだった。


1年生全員でグラウンドを整備して寮へ帰宅したとき、サッカー部以外の先輩たちがニヤついた笑みをこちらへ向けていたのだ。

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