首取り様3
☆☆☆

一生にも将来の夢があった。


体が大きいからボクシング選手だとか、プロレスラーだと勘違いされることが多いけれど、医者になりたかった。


一生は幼い頃遊園地のジェットコースターから転落し、大怪我を負ったことがあった。


ジェットコースターの点検不足で、そのことは後日大きく報道されることとなった。


誰もが悪夢のようだったと説明する中、一生は担当してくれた医師のことがずっと頭から離れなくなっていた。


テキパキと指示を出して的確な治療を施す。


その手際のよさに見とれてしまった。


手術が終わって入院期間になると、毎日病室に来てくれて笑顔で優しく声を掛けてくれた。


術後の回復が順調だと褒めてくれたときは本当に嬉しかった。


一生からすれば先生が神様のように助けてくれたおかげだったが、先生は一生の体力や生命力のおかげだと言ってくれた。


優しくてカッコよくて、自分もいつかこんな人になりたいと心から思った。


『お前が医者? 笑わせるな』


最初にそう言ったのは親戚のおじさんだった。
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