首取り様3
正月で親戚が集まってきているとき、つい嬉しくなって自分の夢を語ったときだ。


酒を飲んで赤い顔をしたおじさんがフンッと鼻で笑ったのを今でも覚えている。


『ちょっとやめてよお父さん』


イトコに当たるお姉ちゃんが慌てておじさんを止めて、隣の部屋へと移動していく。


一生はそれでも自分は医者になるのだと思って疑わなかった。


するすると傷口を縫合していく神様の手。


自分にもそれが持てるのだと思い、子供のころから人一倍に勉強をしてきた。


高校に入学してからも同じだ。


学年では常に1位を取り、文句なしの成績を収めていた。


けれど……。


『お前の夢って医者だっけ?』


昼休憩時間、中庭のベンチで1人医学書を読んでいた一生にクラスメートが声をかけてきた。


そいつは一生の親友と呼べる人間で、なんでも話をしてきた。


『あぁ』


一生は頷くだけで本からは視線を外さなかった。


『無理だよ』
< 111 / 142 >

この作品をシェア

pagetop