首取り様3
半分自分へ言い聞かせるようにして眠りについた。


いつもなら夜中目が覚めることもなく、朝までぐっすりと眠れる長だが、この日は胸に苦しさを覚えて目を開けた。


妻はすでに眠っているようで隣の部屋からの明かりは見えない。


真っ暗な闇の中で自分の胸に手を伸ばしてみようとするが、なぜだか体がこわばってしまって少しも動かすことができないのだ。


なんだこれは!?


焦って声をあげようとするが、声は喉の奥に張りついたまま出てこなかった。


隣で眠っているはずの妻へ視線を向ける。


妻の布団はちゃんと盛り上がっていて、腹部の辺りが上下に規則正しく動いている。


そうしている間にも胸の苦しさは増していて、呼吸をするだけでも痛みを感じるようになっていた。


どうにかして隣の妻を起こそうと試みるけれど、やはり体は動かない。


突然訪れた病に冷や汗が流れて全身が冷たくなっていくのを感じる。


普段から不摂生をしていたつもりはない。
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