首取り様3
けれども納得はできていなかった。


隣の家に暮らす若い夫婦には可愛い赤ん坊がいて、妻は毎日のようにその子の顔を見に出かけていたのだ。


もしもその赤ん坊がイケニエに選ばれでもしたらと、想像するだけで恐ろしくて胸が張り裂けてしまいそうになる。


『でも、小さな子どもがイケニエになって街の人達が黙っているとは思えません』


『30代以上の者ならイケニエにしてもいいと判断したのにか?』


長はふんっと鼻で笑って妻の意見を却下した。


イケニエ自体がひどい行為だということはわかっている。


それでも人々はみんなそれを容認してきたのだ。


そして、妻の意見は聞き入れられることなく雨乞いの儀式当日が来てしまった。


その日、長はいつもどおり三福寺へ出向いた。
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