首取り様3
雨乞いのイケニエを決めるときには必ずここへ来て、まずは自分の身を清めるのだ。


慣れ親しんだ神主にお祓いをしてもらい、そして持参した貝殻を床に並べた。


10個の貝殻を投げて裏を出した数と表を出した数で、方角、イケニエの年齢、性別が決まる。


その中で合致している者をピックアップし、更に貝殻を振ってふるいにかけるのだ。


『今回は年齢制限をやめたんですね』


お祓いを済ませた後、儀式の準備をしている長へ向けて神主が聞いた。


『そうです。今回だけは特別なんです』


長は嬉々として答えた。


幼子までイケニエの対象になるかもしれない今回の儀式は、街の者から批判的な声も聞こえてきていた。


それはどれも妻が口にしたのと同じような内容のものばかりで、つまりは自分の子供、自分の欲しっている子供が選ばれたくないからだという、それだけの理由だった。


『方針を変えるつもりはないんですね?』


神主の言葉に驚いて長は顔をあげた。
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