俺にはくれないの?【短編】
「青山さんが知りたいんなら教えてあげる」
ゴクリと息をのむと、余計に緊張感が増してきた。
「俺に彼女はいないよ」
「……え?いないの?」
「うん。好きな人はいるけどね」
爽くんに好きな人。
彼女がいるという予想は外れたけど、好きな人がいるんなら……
本人から実際に聞いてしまったのだから、もうこの気持ちはあきらめるしかないのかな。
「その人を好きになったは去年の冬なんだけど。すごく一生懸命な子なんだ、何に対してもね。ほかの人がサボるような仕事も真面目にこなすような」
「そうなんだ……」
爽くんの表情や口調から、その人のことが本当に好きなんだと伝わってくる。