俺にはくれないの?【短編】
バレンタイン当日は、前日に作ったブラウニーを人数分持って家を出た。
でも、その中の一つは特別なチョコだった。
ブラウニーの数を少し多めに入れてある。
去年みたいに渡せずに、結局自分で食べることになるかもしれないけど。
袋の1番奥にしまって、大切に持って行った。
「きい、ブラウニーおいしかったよー」
「え?もう食べたの?」
「うん、さっきおやつにね」
放課後にはもう葵にあげたブラウニーは、彼女のお腹の中へと消え去っていた。
もう少し多めに入れておけばよかったかなと思いながら、教室を出る。
わたしは音楽室に近づくにつれて、後悔していった。
やっぱり勇気を出して渡せばよかったかなと――