俺にはくれないの?【短編】
「爽くん……!?どうしてここに?」
「それはこっちのセリフだよ。今日は部活が早めに終わったから帰ろうと思ったら、グラウンドに青山さんの姿を見かけたから」
爽くんに会いに来たなんて、言えない。
しかもバレンタインのチョコを渡しに来たなんて。
「あ、えっと……わたし、帰るね」
結局勇気が出なくて、渡せなかった。
せっかく爽くんに会えたのに。
「ねえ、青山さん」
向きを変えて帰ろうとするわたしを、爽くんが呼び留めた。
「俺にはくれないの?」