俺にはくれないの?【短編】
「1年も片想いしてたんだ。覚悟してね?きいちゃん」
校舎から漏れ出る灯りの下で、わたしたちの間の空気が変わった。
“わたしも1年間片想いしてたよ”
その言葉は飲み込まれてしまった。
彼の手がほほに添えられて、わたしたちの影が重なる。
それは、そっと触れるだけの優しいものだった。
でも、わたしの胸をときめかせるには十分すぎるくらいで――
「明日から彼女って紹介してもいい?」
わたしのファーストキスは、レモンの味がした。
まるで彼みたいな――
わたしが好きになった彼は
優しくて爽やかで――
でも、ときどき甘い、危険なカレシになりました。
END