俺にはくれないの?【短編】
「きい、今年のバレンタインどうする?」
2月に入り、女子も男子もバレンタインで浮かれ気分になっていたころ。
友人の葵が、わたし――青山きいを呼んだ。
「友達と部活の先輩たちでしょ、それにお父さんにあげるから、今年も手作りかなあ」
「よくやるねえ。手作り。もちろん私の分もあるんでしょ?」
「うん、もちろん」
「じゃあ、ホワイトデーのお返し期待しといて」
去年のバレンタインも家族と友人、それから部活の先輩にしか渡さなかった。
好きな人がいないわけじゃない。
わたしの好きな人は学校の人気者。
それに、きっとわたしがチョコを渡しても受け取ってはくれないだろうから。