俺にはくれないの?【短編】
「おはよう、朝から楽しそうな話してるね」
廊下側の一番後ろの席で話しているからか、登校した爽くんが毎朝声をかけてくれる。
30名もクラスメイトがいるから、数人くらいはほとんど話さない人がいても不思議ではないのに。
爽くんは誰とでも分け隔てなく話しかけてくれる。
この席になってから彼が話しかけてくれる頻度が増えた。
だから、このチャンスを毎朝わたしは堪能してる。
「おはよう、爽くん。もうすぐバレンタインだからね」
「そうか。もうすぐバレンタインだったか。2人は誰かにあげるの?」
爽くんは野球部に入っていて、最近髪をバッサリ切ったばかり。
前髪を伸ばしている男子に比べると、目がよく見えて彼の爽やかさを倍増させている。