俺にはくれないの?【短編】
ずっと思っていたことがある。
爽くんには彼女がいるんだろうということ。
だって、そうでもなければ、チョコを受け取るのを断ったりしないでしょう?
「彼女なのか、好きな人なのか。わからないけど、どっちかはいそうね」
葵もこう言っているし、きっとわたしの予想は当たっていると思う。
「きいは、今年も渡さないって決めたんだね」
それに、葵はわたしが爽くんを好きなことに気づいているみたい。
一言も話したことはないけれど、きっと気づいている。
でも、わたしは誰にもこの想いは話さないと決めてる。
だって、この恋が叶うことなんてありえないから。
学校一モテる爽くんが――
何の取柄もない平凡なわたしを好きになることなんて――